願望と成功の間

 サプリ:マーダーインク購入。独断と偏見でまず読んだ感想、トヨタ車みたいな印象だった。ルール運用、追加データが徹底的に詰められているかというとそうではない。悪の犯罪結社・カーライルシンジケートについてバリバリ情報があるかといえば、そうでもない。N◎VAの裏社会について詳細なリポートがあるわけでもない、現行のアサクサ事情について突っ込んだところはわからない。NPCもみっちり詰まってるとは言い難い。

 でも全部揃っている。明確な思い切りの良さは無いけど、減点法的というか、なるべく多くのユーザーの声に応えたいという意思を感じる。もともとユーザーからの声を反映してデータを作る伝統から産まれた本だから、成り立ちからすれば常道といっていい。

 その点、よく出来てる。

 そのうえで、もうちょっと思い切りの良さが欲しかった。『マーダーインク』と銘打ってるのだから、カーライルシンジケートの組織図とか、適当でいいから構成員の数とか、代表的なマーダーインクの仕事で有名な奴とか、そういうものも入れて欲しかった。アルシャードff最高のサプリメントはヴァーレスライヒだと思ってる私だから、今回アレくらい徹底した組織としてのバックボーンを詰め込んでほしかった。

 さて極私的な興奮ポイントとしては、やっとボス:アーサー・カーライルの顔がわかった点。ジョジョ第五部だったらこの情報だけで一人死ぬ。おおアバッキオー。それにマーダーインクの面々が増えたのはやはり嬉しい。マイキャストの殺し屋さんはイタリア野郎のカーライル:マーダーインク所属だったので、やっと友達が増えた気分。

 まあ、先に触れたように今回ちょっと過剰に期待していたので、その分は肩透かし。GF誌連載してるN◎VA事情についての記事、アレをまとめて読みたいという思いもあった。あわよくば今回まとまってるかとも思ったが、ちょっとがっかり――。

 待て。

 いやいや、待て待て。そうさ。きっとそういうことさ。

 すぐに次のサプリが出るんだよ、間違いない。N◎VAワールドガイダンスみたいなの。もうすっげえの。

 ロシア・ゴエルロを走るシベリア鉄道は今どのようなことになっているのか。衛星打ち上げで世界一はいまどこの国なのか。ヴィルヌーヴヴェネツィアは未だに海上都市なのか。北米連合ニューオーリンズは未だにジャズが鳴り響いているのか。電脳世界のセカンドライフは法的整備を受けたのか。AI生命にとって倫理とはどういう概念を与えられているのか。N◎VA以外にもヒルコ街は増えているのか。アヤカシにサイバー処置を施すのはどういう技術だ。深海探査とか極地探索は進んでいるのか。アフリカはさながらダンジョンエクスプロールになってるのか。

 あっという間に疑問点が出てくる。こういうのに全部答えちまうような、すっげえのが出るんだよ。

 間違いないね。

 もちろんこうしたことは割とただの願望だけど、こんな風に書いておくと知らぬ間に「お、こういう考えがあったか。頂き」みたいな事になって、気が付いたら成立しちゃうなんてことがあるかもしれない。ネットは広大ですことよ。

 このような本が是非読みたい、と締めくくっておく。