グラハム兄貴を語ってダブルオーへの耽溺を示す日

 「2313 Sep 6 JAPAN」

 我々はグラハム兄貴に一つの質問をしたかっただけなのだが、ついぞ聞きそびれてしまった。

 Why?

 なぜ?

 なぜ貴方が最後のフラッグファイターに見えるのか?

 フラッグファイターはその後の世界に生き延びていくことは出来なかったように見える。ドライブを変更するだけで、顕現したその気迫は紛れも無く人々の頭に『最強』の二文字を植え付けるに十分なものだった。パイロットの技量とあいまって、最強のフラッグはただビームサーベルのみで全てを叩き落とす勢いだった。ビームサーベル。この点、私の予想は見事に外れてしまったと言っていい。時代劇ファンの端くれとして、益荒男の心意気を忘れていた。

 そう。グラハム兄貴は我を美しゅうすることに命を賭けても、なお勝つためにあらゆる手立てを惜しまない――すなわち、義の人であり、いくさ人であり、絢爛たるカブキ者であった。

 話を戻そう。

 あれほどの力を見せ付けたフラッグファイターが、世界連邦において活躍の場を与えられていると想像することはとても容易い。まるでコーラを飲んだらゲップが出ると予測することに似ている。

 にも関わらず――兄貴の戦いが余りにも鬼気迫るものだったためか――世界連邦でフラッグが活躍しているという想像に、どこか寂寞の装いを感じ取ってしまう。

 恐らくは、半身を失った機体が乗り手との別れを、忘れられないのだろう。気が付けば、フラッグは兄貴の専用機として空を駈けていたのだから。

 ならば、フラッグが世界の空を舞うことはもう無いのだろうか。

 この問いにはいつも一つの感情が湧きあがる。そう――不安、と言っていい。

 もうその不安を笑い飛ばす男は、いない。

 惜しい、とも言える。残念、と言ってもいい。が、確実に言える。

 空が、広くなってしまった。


 一人のパイロットによってその真価を引き出された機体が、そのパイロットとともに時代の幕を引くというのも悪くないのではないか。今はそう思う。