ダブルクロスだーいすき!

 十面体のサイコロを十も二十も購入し、エフェクトという言葉にピクッと反応する人は、一体どんな経験をしてきたのだろうか。とあるメガネの男は言ったという。「そりゃあダブルクロスで遊んでる人だな」

 裏切り者(ダブルクロス)で遊んでいる?

 そんな風に、言葉の表層の意味に囚われてしまった方がいたらすまない。周知という形容を当てるには、趣味の世界は広大すぎる。公式サイトをチラ見してからでもページをスクロールするのは遅くない。http://www.fear.co.jp/dbx2nd/index.htm

 他所様に勧めておきながら、世界観のページとかかなり前に開いたっきりだからうろ覚えだという事に気づいた。いやあのね、えーと、とんでもねえウイルスに感染しちまったので、人間は皆次の種になっちまったようなもんだけど、いきなりご破算で新世界という訳にもいかん。発症の具合でまったく違う能力の超人になっちゃうし、とにかく日常を大事にしていこう――。私的な理解レベルはこんな感じ。

 新しい人類とこれまでの人類(一般社会)という世界観は、個人的に大変楽しく読んでいたオメガトライブが実にしっくりくる。オメガトライブワールドでは限界に到達していたホモサピエンスは、種の終着にして新しい種であるアルファ=オメガとして世界の裏側で権力闘争を行っている。まあダブルクロスの世界では、人類はみんな別の種にかわっちまったみたいだから根本はまったく異なる。でもイメージはアレが一番しやすいんじゃなかろか。

 このTRPGの素敵なところは、なんといっても能力のバリエーションが豊富で、ほとんどあらゆる超人を再現できるところだろう。ちょっと世界観を変えて、例えば能力の源泉は超科学だ、とかオカルトの力だ、とかいってもまったく違和感無しに魔法使いから勇者ロボまで構築できる。あまつさえスーパーサラリーマンまで造形できるんだから。……まあ、エリア51とかに通りすがるサラリーマンとか、企業戦士と書いてビジネスコマンドーと読ませるサラリーマンとか、正しく『スーパー』の形容に恥じない奴らになっちゃうが。

 本としては確かに高い。4000円を本に支払う経験は、本好きというマイノリティでなければそうそう行わない行為だと理解している。

 試しにその辺に歩いている人に片っ端からこう声をかけたとしよう。「五千円渡します。ただし、使い道を三つ上げてください」――。

 まあ、百人に声を掛けて、やっと一人。もしかしたら二人。そんなとこだろう、4000円の本を買う奴ってのは。……ひょっとしたら今のご時世、もうちょっとイロをつけて考えてもいいかもしれんがさ。とにかくなかなか買わないもんでしょう。

 しかし、この趣味に――TRPGに耽溺している人間の一人として言わせてもらえば、まったくリーズナブルな価格であった。

 趣味というのはどーしても、「やらなきゃわからん」ところがあるもんだ。やらんでもパッとイメージ沸く趣味なんて、スキューバダイビングとかあの辺くらいではなかろうか? 俺なんぞは趣味について、何が面白いか問われるたびに回答が変わるくらいイメージを伝えるのに四苦八苦してる。

 TRPGはとくに「やらなきゃわからん」レベルが高いと思う。

 自分の事例だと、いきなり身銭を切って、いきなりゲームマスターをして、それで面白さを知った。これは友人の喩えを借りるならば、「日雇いのバイト代土日分でスーツを買い、そのままホストデビュー」並に極端な入り方だという。「いや、それには絶対負けると思う」……この喩えをされたときにした突っ込みだ。

 この「やらなきゃわからん」世界に足を突っ込もうかどうか迷っている人がいるのなら、(1/10000)しかもこんなブログに行き当たっちまったというのなら、(1/1000000000)それはめぐり合わせとしか言えまい。その場合、とにかくダブルクロスを買う事をお勧めしよう。

 そしてお勧めした口も渇く前になんなんだが、来年の今頃に新しく版上げされるんで、そっちを買った方が良いのかも知れん。いや、マジすまん。待てねえ! という時には是非に。

 他にもカオスフレアSCとかトーキョーN◎VAとか色々あるんだが、その辺もまた巡り合わせに期待しよう。