日常会話をなるべく思い出す
とぉるるるるる とぉるるるるる
がちゃ。
「空の境界のDVDが手に入ったんスよぉ〜 ヨダレズビッ! つぅーもんでがしょーォ?」
なんだA君か(仮名)。別にうらやましくもなんともねーから連絡はいらんわボケぇ。
「だってお宅、いっつもバイト先で渋いのばっか借りてるじゃん? たまにはアニメでも見ようぜ」
たまにもなにもアニメなら見てるさ。知ってるか? 最近まとめてみたのはガンバの大冒険だ。お前はガンバたちが水を飲めずに一昼夜過ごす話の緊迫感が想像つくか? 1.3トゥエンティフォーはあるぞ当社比で。ジャック・バウアーも汗だくだ。
「渋いねえ。お宅まったく渋い」
これが紳士というものだ。お前もそういうのは後でまとめて見るとかしろい。そうだ、代わりに白鯨伝説を見せてやろう。ちょうどお前のツタヤにあるんだよ。うん、バイト先。すごいぞーSFで船長が地球破壊爆弾を止めるために宇宙を旅する話だ。ホロリもあるよ!
「ポロリをくれよ」
わかってない。オメーにはエイハブ・イシュマール・アリの偉大さが何もわかってない。
「わからねえ! ところで俺の話にそろそろ戻ってくださいよ」
んー? 見よう。最近時間がねえから40秒で仕度しな。
「いや、こっち来てよ」
めんどくせえなあ〜。行くけど。ああ、劇場で見てるからお前の脇で次の展開を教えて言ってやろう。
「うわ」
そしてハーゲンダッツを寄越せ。修行の末に可能となった、両義食いを見せてやる。
「誰がお宅のフトモモを凝視するというのか」
黙れそして聞け。聞けってー……切りやがった。
いくか。